Nash Artists' Labo

Nash Artists' Labo

自己の主体的な表現としての作品=アルバムづくりにフォーカスした音楽制作の場へ。Zipeastが "Nash Artists' Labo" に生まれ変わる。

工房ワーク

工房ワーク

新社長就任~ナッシュミュージックライブラリーの新しい「音楽ライブラリ」の取り組み。

コアメッセージ

コアメッセージ

音楽ライブラリだからできること。著作権を引き受けること。自由自在に音楽を創るための枠組み。

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コアメッセージ

音楽業界の既存システム・著作権ビジネスから楽曲を解放し、快適に使用できるBGMを制作しています。

⇈上写真は80年代中頃のスタジオ風景⇈   2018年8月、ユーザーの皆様のご愛顧により、ナッシュミュージックライブラリーは創業 35 周年を迎えました。1983 年の創業以来、ナッシュミュージックライブラリーは一貫してオリジナル楽曲の自社制作にこだわり、全ての権利を集約・自社管理することで、ユーザーの皆様が使用しやすい「完全ロイヤルティーフリー」のライセンス許諾を行ってきました。 アーティスト、作曲者、作詞者、編曲者、演奏者、レコード会社、出版社、配信業者。そもそも、音楽作品の制作・供給には様々な人々・組織が関わり、様々な権利が発生します。楽曲の使用条件によっては、複数の使用許諾、高額な使用料の支払いが必要となることがあります。 煩雑・複雑な音楽の権利処理に悩まされる映像制作の現場の声を聞いたナッシュミュージックライブラリー創業者の梨木良成は、業務用に最適化した「完全ロイヤルティーフリー」のライセンス契約を発想し、「使用されるため」の音楽ライブラリーの制作を開始しました。以来、創業者、ナッシュスタジオの自社スタッフを中心に、様々なアーティストと緊密な関係を築きながら新しい音楽作品を生み出してきました。   創業当時スタジオで音楽制作を行うナッシュミュージックライブラリー創業者梨木良成   現在はコンピュータで音楽を制作するDTMが一般化し、一人でも音楽を制作できるようになりました。巷にはストリーミングサービスの波が押し寄せ、誰でも容易で気軽に作品をリリースできるようになっています。世界中で無数の音源が日々アップロードされ、音楽制作を行う AI の台頭も聞かれるようになりました。業務用音源、市販音源に関わらず、音楽コンテンツの供給過多とも言われる時代に突入しています。 めまぐるしく変わる世の中にあっても今、ナッシュミュージックライブラリーに何が求められているのか?を問いながら徹底した権利の自社管理創造的でプロフェッショナルな音楽作品の制作迅速かつ手厚いカスタマーサポートに今後も精進してまいります。 Nash Studio スタッフ一同  

Feature

ナッシュ音楽チャンネル

業界最安値のBGMサービス。「ナッシュ音楽チャンネルはどうしてそんなに安いの?」という疑問にプロデューサーがお答えします。

業界最安値で提供しているナッシュ音楽チャンネルの空間演出BGMサービスについて、以下のようなお問い合わせをいただくことがあります。 「素人が作った音楽が入っているから安いのですか?」「売れなかった楽曲が入っているから安いのですか?」   これだけ安い(月額350円)理由は一体何だろう… そんな風に思っている方が結構いらっしゃるようです。 料金設定にあたり、月額1,000円くらいが妥当であるという社内意見が結構ありました。他社のサービスやBGM業界の市場を見渡した結果、それくらいの価格感ではないかと。しかしそれで本当にいいのか...という疑問を感じていました。   BGMユーザーは店舗が中心で、総ユーザー数に限りがある。 従来型の店舗向けBGMサービスでは大きなユーザー増を見込めない。 一定数のユーザーを「取り合う」業者が一つ増えるだけ、という事になるのではないか。 ともすれば価格競争を加速させ、BGM業者同士で互いを苦しめる結果になるのではないか。   業界が疲弊すれば、アーティストの仕事が減る、なくなる。最後に困るのは、私たち、音楽を作る側の人間です。自分たち、アーティストたちの首を絞めるような事は、決してしたくありません。やはり、ただ単に参入するのではなく、何か新しい事、新しい提案をできないか…   BGM業界が活性化したら、もっともっとアーティスト・音楽家たちが活躍できる世の中につながるかもしれない。 試行錯誤しました。   「なぜそんなに安いのか?」へ回答します。 価格競争で勝つためではありません。 BGMを利用する新しいユーザーの層を開拓するため、できるだけ安価にしたのです。 BGMを必要とする人々はこの社会にもっといるはず。店舗だけでなく、各地域のイベント事、SNSでライブ配信をする人、ショーや演劇をする人、お家で外食しているような雰囲気を味わいたい人、ゲームをして遊ぶときに演出したい人。そんな方々にもBGMを使っていただきたい。 また、音楽の著作権や法律の問題が気になり、公共でBGMを流すことをためらっている方々もいらっしゃる。予算的に導入を見送っているお店もあるかもしれない。市販CDや一般の音楽配信サービスを公共で流すには、楽曲の権利者に相応の対価を支払う必要がある事も知られるようになってきています。   もっと気軽に、いろんな方にBGMを使ってもらいたい。そこで、月額1,000円は高すぎると考えました。   幸い、私たちのメインビジネスは、放送・映像・動画制作向けの音源使用許諾サービスである「ナッシュミュージックライブラリー」の制作・運営です。こちらは、おかげさまで35年以上クリエイターの皆様にご愛顧いただいており、ナッシュ音楽チャンネルの提供価格を下げても、会社自体が経営的に立ち行かないという事にはなりません。   より幅広い層のユーザーにBGMを提供する事。それも私たちの使命ではないか。 というわけで、専用アプリの開発も含め、月額350円のサービスを作りました。(450円もあります^^) BGMをもっと気軽に、気分や用途で使い分ける、持って歩ける。そんな面白い使い方があってもいいのではないでしょうか?...という提案をさせていただいております。ナッシュ音楽チャンネルの立ち上げには、そんな思いが込められています。 今後ともナッシュ音楽チャンネルを宜しくお願い申し上げます。    近藤 学 (ナッシュ音楽チャンネル 開発プロデューサー/取締役制作部長)

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所有する作品を全て”Nash Music Library”として統合し、これを一元管理し、より利便性の高いパーフェクトなライセンス許諾を可能に。

Nash Music Libraryをご利用いただいている皆様へ 平素より弊社音源をご活用いただきまことにありがとうございます。 音楽を取り巻く社会情勢の激変の中、音楽著作物の自社制作、自社管理を貫いて来た我が社のスタンスが日々際立って特異な存在になりつつあることは自他共に認めるところとなってきておりますが、この度Nash Studioは、所有する音楽作品をすべて”Nash Music Library”として統合し、これを一元管理することとし、すべてのコンテンツ(注:一部クラシック/ワールドミュージック作品を除く)をロイヤルティフリーベースで使用許諾できる体制に移行致します。 さらにこれまで事実上使用許諾が難しかった歌唱・演奏・カバーバージョンの新規制作等改変にかかわる許諾契約も、今後一気に拡充することによりご契約者様の利便性を高めるべくパーフェクトなライセンス体制に生まれ変わる所存です。 Zipeast・大山音工房をお楽しみいただいている皆様へ 株式会社ナッシュスタジオは2020年10月1日をもってZipeast作品/大山音工房作品の一般市販を終了することになりました。これまでのZipeast作品/大山音工房作品は今後はNash Studioが運営する”Nash Music Library”の、それぞれ(新)Artists’ Laboレーベル、大山音工房レーベル、その他のシリーズの作品として生まれ変わり、個人鑑賞から業務使用まで独自のメディアと方法で新たにご提供することとなります。 ウェブサイトは2021年の公開予定となっております。音作品創作工房ナッシュスタジオの新しい取り組みにご期待ください。

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3人のチェリストをフィーチャ―。クラシック、和風、ロックを中心に、和魂洋才のサウンドに彩られた、バラエティ溢れるオリジナル楽曲を収録したチェロトリオ・アルバム。

  (写真左から順に) 柏森治・竹中裕深・藤原克匡の3人のチェリストをフィーチャ―。クラシック、和風、ロックを中心に、和魂洋才のサウンドに彩られた、バラエティ溢れるオリジナル楽曲を収録したチェロトリオ・アルバム。   Triad by Katafu Cello Trio 黙々と、誠実に、ベテランの安定感で支える柏森治。女性的な優美さ、繊細さが光る、紅一点の竹中裕深。チャレンジングな運指をこなす、アクティブで、若々しい、藤原克匡。従来的な音楽の文脈では、全てのチェリストが同じ旋律の演奏をするように求められる事も多いが、本作【Triad】の制作においては、メロディ・バッキング・ベースといった演奏上の役割分担を行う等、三者三様の特徴が際立つくような作品づくりを心掛けた。   アルバムには柏森氏のオリジナル作品も収録している。   【Triad】の数字の「3」へのこだわりとイマジネーション ・男女の三角関係を主題に三奏者がそれぞれの役割を演じる楽曲“Hard Triad”。 ・入り乱れる旋律が躍動感のある三つ巴の戦いを描写する“三者の舞”。 ・主人公の三毒煩悩を表現するロック調の“Quick Sand”(芥川龍之介の「蜘蛛の糸」がモチーフ) ・三奏者がそれぞれ「叩く (メロデイ)」「研ぐ (バッキング)」「押さえる (ベース)」役割を受け持ち、三者で一本の刀を作り上げていく刀鍛冶の工程を再現する“Sword of Sparks”。 その他、最小単位のフレーズがそれぞれの奏者の赴くままに変化していくミニマル風の“東南東の風”。天神祭をテーマにし、太鼓や摺鉦を模した手法がユニークな和風の“天神”。チェロでしか表現できないとも言われる高音の魅力が詰まったクラシカルな難曲“三峻”等、全てオリジナル作品を収録している。どの楽曲でも演奏家の個性が輝いている。 近藤学 (プロデューサー)

Reccomend

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「小さなオーケストラ」とも言われるギターが、湿気と不条理をたっぷり含んだ日本の土壌と霊性に黒々と呼応する

「小さなオーケストラ」とも言われるギターが、湿気と不条理をたっぷり含んだ日本の土壌と霊性に黒々と呼応する。 黒弦 by 3rd Craft   「ギターを和楽器に…」いつものように思いつきアイデア合戦で企画ミーティングが盛り上がったのはいつのことだっただろう。Nashの並み居るギタリストが、また訳のわからん話と明らかに迷惑そうな顔だったのは私の思い過ごしかもしれないけれど、作品作りは遅々として進まなかった。   邦楽をギターでやる?...いいや。他の和楽器とギターのセッション?...ちゃうな。ギターに何か細工して和風の音にする?...あかん。日本調オープンチューニング!...うう~む。 箏のように、琵琶のように、三味線のように…ギターを弾いたとしても、ああ面白かったって言ったとしても、それNashの仕事やろか?という疑問がムクムクと浮上して、既に様々に確立した日本伝統音楽のエリア内でギターができることなんて他の人に任せておいて、西洋人はおろか日本人でもあんまり聞いたことのないようなサウンドを、コンテンポラリー日本人のオレたちがつくれたら、それをギターでやったら「ギターは和楽器に」なる。 これまたいつもの(やや粗暴な)理屈を並べて、試行錯誤が始まった。 で、「黒弦」です。 結論から言えば、日本固有の音楽メンタリティー、音楽外メンタリティー、時空観/自然宗教観がなければこの作品作り/音作りはできなかった…と断言しましょう。「小さなオーケストラ」とも言われるギターが、湿気と不条理をたっぷり含んだ日本の土壌と霊性に黒々と呼応する。凛として、決然として、弾いている、聴いているのはざまを自在に行き来するようなナチュラルさがまこと驚きだったのと同時に不思議でさえあった…伊藤くん、素晴らしい演奏でした。  梨木良成 (プロデューサー)   スタジオでのスクランブル伊藤と梨木良成  

Feature

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音楽ライブラリだからできること。著作権を引き受けること。自由自在に音楽を創るための枠組み。

「著作権」を引き受けること ―音楽ライブラリをビジネスとして始めるきっかけは何だったのでしょう? ナッシュミュージックライブラリーがスタートしたのは、ここ大阪市北区です。ここ西天満は東京の放送関係者にも有名な場所です。関西テレビやよみうりテレビが近くにあったことで、周りにプロダクションが点在し、音楽制作のスタジオもここに集まっていました。中でも西天満は当時広告会社も多く、ナッシュスタジオの前身になる会社も、広告代理店の入っていたビルに入居していました。昼になったら、その辺のエンジニアやミュージシャンがぞろぞろ昼飯食いにうろうろしていました。 たまたまある日、スタジオで知り合いのエンジニアと雑談していると、仕事で使う音楽がなくて困っているんだ、と言うのです。「どんな音楽?」と聞いてみると、テレビ・ラジオ放送やCMに必要な類のオープニング、ジングル、テーマ等、ということでした。「どうして?世の中には音楽なんてたくさんあるのに」と私は思いました。さらに話を聞くと、楽曲の権利がスムースにクリアできない、つまりスムースに使用許諾が得られないことが一番の問題でした。 ―当時も煩雑な権利処理に悩んでいたわけですね。 当時から、著作権使用に関してはがんじがらめの管理許諾体制があったわけです。そもそも音楽と言うのは、世の中に作品が流れると同時に、社会のあらゆる領域に浸透していくものです。その浸透力は映画や小説といった他のコンテンツを圧倒的に凌駕しています。そんな音楽を仕事・業務に使うとなると、利益を生み出すために作られた管理体制に組み込まれてしまいます。例えば、CMならこの窓口、この許諾、この使用料。何秒使ったらこの使用料。全国放送かローカル放送か。ラジオかテレビかあるいは映画か。とにかく事細かに管理されているわけです。使用用途毎に許諾を得る必要があり、使用料の支払いが必要になります。そもそも使用自体がNGであると事後的に発覚することもあり、その場合は仕事が全てパーになってしまいます。これは一つの例に過ぎませんが。 ―後から高額な使用料を請求されるなど、大きなトラブルにもつながりかねません。 著作権管理団体、音楽業界の著作権の管理の仕方も含め、非常に音楽が使いづらい状態が続いており、制作現場は困っていました。もちろん音楽の中身もそうです。例えば、新しいハイキングコースのインフォメーションを行いたいと。映像は春の野山。春の空気が優しく香るような美しい調べで、なおかつナレーションを邪魔しない音楽が欲しい。おまけに権利関係はクリアで、高くなくて、アノニマス。そんな音楽があったら便利だな~と (笑) 最初はめちゃくちゃ言うなと思いました。そんな都合のいい音楽があるわけないだろう、と (笑) それから事務所に帰って、今日こんな話がありましてね、と話をしました。その時はナッシュスタジオの前身の会社だったんですが、当時の社長が、梨木、それお前作れよ、と言ったんです (笑) え、そんなのどないしまんねん、とか言いながら (笑) でもどうすればできるだろうと一生懸命考えました。 ―それがナッシュミュージックライブラリーの始まりになる。 始めた頃(1983年創業)は、ほとんど、放送関係、テレビ・ラジオ、広報ビデオ(昔は広報映画)などの業務に使いやすいジャンルにターゲットを絞って制作しました。当時、音楽業界はそれなりに活気があって、ミュージシャンの知人も周囲にたくさんいましたし、その中には作曲をする人もたくさんいましたし、手伝ってくれないかと彼らに声をかけたのですが、もうきっちり全部断られました。そんなものを作るのは嫌だと。音楽というものは一曲売れたらそれで一生食べていけるかもしれない。それなのにどうしてそんな仕事をわざわざするのか?それが当時の音楽家のメンタリティでした。たくさんギャラが出るならやるという人もいましたが、少量のギャラしか設定できません。原価計算したら出せなかったんです。貧乏会社でしたし、第一どれだけ売れるかわからないから捻出しようがない。しょうがないから、私一人で作り始めた、というわけです。   スタジオで作曲する梨木良成。90年代中頃。   ―当初からビジネスとして成り立つだろうという確信はお持ちでしたか? 何であれ仕事としてお金をもらうためには何かしら世の中の役に立たなくてはいけません。営業のスタッフと制作スタジオやポスプロに伺い、音楽に困っていらっしゃいませんか、ということをリサーチして周りました。確かに映像向けの音楽は不足しており、どの現場も困っていました。大きな声では言えませんが、現場は相当無理を強いられていたようです。契約的にも、音楽的にも、金額的にも、使える音楽が少ない状態で、大変苦労していた。だから、価格さえ適正であれば受け入れられるのではないか、と思いスタートしました。確信があったわけではありません。 ヒット曲を出して、みんなを感動させて、100万人に受け入れられる音楽を作る、それが当時の一般的な音楽家の命題でした。そんな時に天気予報の音楽を作れるか?音楽家としては相当な頭の切り替えが必要になります。私自身、中学性の頃から、音楽しかないような、ちょっと頭のほうけた人間ですから、そんな仕事やるやついないよな、と思っていました。しかしその時はやってみたろやないか、おもろいやないかと。実際は悲壮なものでしたけど (笑)  ―ここに記念すべき第一集のアナログレコードがありますが、リリースから35年以上経った今、そのサウンドは古びているどころか新鮮に聴こえます。 年間400曲、そんなペースで制作しました。最初はお金もなかったし機材もありませんでした。当時はコンピュータもなかったですし、全て自分で演奏しなければいけませんでした。CM音楽の作曲家で相当たくさんの作品を作っている人もいましたが、それはあくまで譜面を作るまでの仕事です。私の場合は、音まで仕上げないといけませんでした。 ―一日一作以上の驚異的な制作ペースです。 確かに、考えてみると、そういう意味では、私ほどたくさんの楽曲を作った作家はそんなにはいないでしょうね。そこまで集中して、がんがん作った人というのは周りにはいません。聞いたこともないです。多分、それまでやったことのないことに挑戦する意気込みだったと思います。当時の一般的な音楽制作の考え方は、時間をかけてバンドの曲を練ったり、受け仕事でもアレンジやセッティングにこだわり、例えば、たった2曲を録るためだけに何日も、ことによったら何ヵ月もかけたりしていたわけです。当時の音楽制作はコストがかかることが前提でした。オーケストラやスタジオ費も使って、お金だけはどんどん回っていた感じですね。一体誰が儲けているのか、ただみんなで金とエネルギーの浪費をしているだけではないのかなんて冗談が出るくらいでした。 ―DTMが一般化した現在とは異なり、当時は大勢の人が関わって音楽制作を行っていたので手間もかかったはずです。 それに比べると、一人で始めた音楽ライブラリの制作スピードは全然違いました。例えば少数の作品を作って「どうぞお使いください」と提案したところで「使い勝手が悪い」と返されてしまうのが落ちです。ライブラリは楽曲のバラエティ・バリエーションが必要とされます。それまでのスピード感ではとてもできなかったし、思いついたらすぐに音にしていくと言うような感じです。まあしんどかったですが、ある意味面白かったです。「こんな曲を作りたい」その一心で、一ヶ月かけて作ったものをさらに一ヶ月かけて手直しする。普通音楽家はそういうやり方をして自分の作品を創っていくものですからね。 ―何年もかけてやり直すこともあると聞きます。 音楽ライブラリの仕事は、それとは全然違うスピード感でばんばんやっていく。ある意味、そんなことは普通やりませんから、面白いと言えば面白かったですね (笑) それはもう徹底的に腰を悪くするくらいに大変でしたが。バンドで何時間も演奏させられたことはありましたが、曲作りを四六時中やっていないといけないというのは、それはそれで、ある意味、得難い経験をさせてもらったことは間違いないですね。 色んな考え方があり、これが正しいとか、これが間違いとか言うつもりはありません。しかし、それだけたくさんの数の作品を作ることに意味がないかと言ったら、絶対にそんなことはないですね。音楽を作るとはどういうことか、そんなことを立ち止まって考えるよりも先に、次々次々に、どんどん何かを生み出していく、するとどーっと自分の中の何かが活性化されていく・・・そんな作業を誰でも一度はやってみたらいいのではないか (笑) そんなことをしていたら何もなくなって枯れてしまうんじゃないか、と思われるかもしれませんが、それはちょっと違う。あーもうだめ、そう思ってごろんと横になり、一時間くらい寝ていて、ガバッと起きてもう一回やろう、と。それでまた出てくる。ある種の極限状態なのかもしれないですね。マラソンでもランナーズハイとかあるじゃないですか、あれと同じようなことがあるかもしれません。これは単なる余談ですが (笑) ―一方、その頃からすべての権利を集約して音楽作品を揃えていき、ユーザーが使用しやすい契約体系を構築しています。 音楽の契約体系、料金、供給方法をユーザーに受け入れやすいように形作ることに努力してきました。音楽ライブラリの大きな課題は、音楽著作物をどのように許諾するか、ということと同時に著作権を許諾する権限をいかにして保持するかにかかっています。それがナッシュミュージックライブラリーの社会的役割を担っていると言ってもいいと思います。一曲売れたら音楽家が儲かる。それは音楽が著作物であり、著作権が作者にずっと保全されており、曲を聴いた人や使った人からお金を徴収するために作られた管理システムがあるからです。そのシステムによって大金持ちになれる。でもその同じシステムが音楽を使用することを難しくしていることもまた事実です。 当時のミュージシャンは、私を含め、そんな既存の音楽ビジネス・システムの枠組みの中にありました。そのような時に、一回だけ使用料支払えばずっと使えるレコードが欲しい、そんな厚かましいことを突然言われました。最初聞いたときは馬鹿者と思いましたが (笑) その後、どんな音楽が放送・映像業界の現場で便利かについてヒアリングを重ねた結果、やっぱりそれが一番使い易いのだなと納得しました。音源の使用料を、最初にじゃあいくらですよ、と全部まとめてもらってしまう。 ―非常にシンプルですね。「音楽は権利の塊」と言われるように、音楽を創る際には多くの人が関わるので、様々な権利が発生します。それをすべてクリアにし、BGMとして使用するのには各々の許諾が必要なところですが。 一回しかもらわない。それがナッシュミュージックライブラリーの著作権の使用許諾方式であり、創業当初から今日に至るまで、全く同じシステムです。1983年当時、そんなことは誰もやっていませんでした。調べつくしたわけではないし、知りませんけども (笑) 自分の耳目に入るものにはなかった。一回お金をもらったらそれでいいですよ、いくらでも使ってください、と。もちろん契約書を交わすわけですが。これはもちろん「ロイヤルティフリー」とか「著作権フリー」とか非常にややこしい言い方で呼ばれるようになった許諾方式です。要するに、独自の著作権許諾システムと音楽コンテンツを一緒にお客さんのところに持っていったわけです。 ―それを30年以上に渡って行っている。豊富なバリエーションが生み出され、ますますライブラリが充実しています。 一般的に音楽の制作は多くの人が関わってクリエイトするものです。曲を書く人、詩を書く人、アレンジする人、演奏する人、歌を歌う人、録音する人、完パケする人等、コラボレーションとして一曲が完成します。当時、それを全て一人で行うのは至難の技で、実際最近まで音楽制作はかなり大変な作業の連続でした。現在はPCだけでも完成度の高い音楽を創ることができるDTMの一般化で、多くの人が関わらなくても、一人でも楽曲を創れるようになりました。 ―首都圏のユーザーの割合が非常に高く、東京の音楽制作会社と思われている方も多いそうですね。 インターネット利用が進んだ現在、ビジネスモデルが小売に近いこともあり、特に会社の場所を選ぶ必要もありません。デジタル化によりデータ転送とダウンロードが容易になり、音楽制作はますます場所を選ばなくなってきています。ナッシュミュージックライブラリーはアナログ時代にスタートしましたが、徐々にデジタル時代へ移行していった時期を経て、今は制作の現場から商品そのものまでがデジタルとなっています。 インターネット上で音楽がデジタルコンテンツとして販売できることを知った1995年頃、それまで販売していたCDに代るメディアになる確信を持ちました。これは私たちにはとても幸運なことであったと同時に、様々な中小零細企業がもつ豊かなコンテンツを広く社会が手に入れることが可能になったことを意味しています。ダウンロードサイトを立ち上げた当時、できたばかりのYahoo、インターネット雑誌からの掲載オファーもあり、国内より海外からの注文の方が先に来ました。 ―便利にはなりましたが、著作権の管理はよりいっそう難しくなっています。ストリーミングの台頭により、日々、世界中で無数の音源が気軽にアップロードされるようになりました。 ネット上で音楽が縦横無尽に飛び交うようになった今日、著作権が保護されない、あるいは供給側も著作権についてよくわからないままに供給している現実があります。でも逆に言うと、これは昔から同じです。インターネットの世の中になり、音楽ダウンロードやストリーミング等、多くのサービスが様々な形で提供されていますが、著作権についてはまだまだみんなで考えないといけない余地があり、意識を大きく変えていく必要があると思います。音楽ライブラリの事業は、著作権について確信を持っていないとできません。ナッシュミュージックライブラリーは、その創業から今日に至るまで、一貫した考え方で、音楽作品の著作権をきちんと整理して提示してきました。ある意味、音楽ライブラリをやれば自由に音楽を創れる、そんな場が生まれる一方で、そこではアーティスト自身が必ず引き受けないといけない事があるということです。 ―市販音源は言うに及ばず、業務用音源である音楽ライブラリのコンテンツも供給過多と言われています。そんな時代だからこそ、供給側だけでなく、アーティスト側にも責任が問われます。 著作権の問題を引き受けないと音楽ライブラリはできません。アーティストはどうしてもその辺がぼんやりしたままというケースが多い。ですから、ナッシュミュージックライブラリーで仕事を始める制作スタッフには、ここまでお話をしたような作家としてのメンタリティの部分、著作権に関する話は、よく理解してもらえるまで話をしてきました。若いアーティストにも常々申し送ってきましたし、現在のプロデューサーも間違いなくやってくれていると思います。その点、ナッシュのスタッフはめちゃくちゃ気合いが入っていると言えます。今でも制作スタッフたちの認識について時々確認させてもらいますが、いや、うちのスタッフは気合いが入っています (笑)   スタジオで談笑する梨木良成とスタッフ。80年代中頃。   自由自在に音楽を創るための枠組み ―音楽制作顧問自身、ずっと音楽一筋です。 決定的な出来事が中学生の時に起こりました。小さなトランジスターラジオをもらって、面白がっていつも寝る前に聴いていました。1960年代初頭、テレビ真っ盛りの頃です。ソ連の 日本向け放送とか、どこか南米からの短波(?)放送とかも面白かったですけれど、当時テレビではまず触れることのない洋楽の番組がとても新鮮でした。そしてある日突然爆発したんです。「今週のアメリカキャッシュボックス第1位、ビートルズの”トゥイストエンドシャウト”!!」脳天がひっくり返って、血液が逆流して、文字通り瞬間的に始まった感じです。 ―1976年にロックバンド”BUX”のメンバーとしてビクターからレコードを出されています。 当時はもちろん、音楽を創るということが自分の作品が顔と名前付きで、どんどん世の中に出て広がっていく、ということとほとんどイコールでした。自分の顔・名前を売らないといけない。この曲は私が創りました、と言って回らないといけない。広く世の中に「いい曲だな」と言ってもらうためには宣伝もしないといけない。自分の作りたいものと世間のニーズが一致するとは限りません。「新しいサウンドを生み出したい」「斬新な作品を創りたい」という意識を持つと、簡単には理解してもらえなくなります。私自身、色んなことをやりました。こんな音楽を作りたいというビジョンを持ち、それを作り、売る。とにかく売れなければ話にならない、そんな時代でした。 ―バンドを解散後、CM等の楽曲の受注制作に従事されます。 かつての大阪には、テレビ・ラジオCMの仕事も多く、タカラヅカ歌劇やOSKが華やいでいました。オリジナルの音楽制作の仕事も多く、演奏家や制作会社、録音スタジオも活況でした。こういうものを作って欲しい、ああいうものを作って欲しい、と頼まれて作りましたが、私自身は受注して音楽を制作して納めるという仕事に、結局は向いていなかったのかも知れません。 これは一般論として聞いていただければと思いますが、曲を発注する側は、予め欲しい楽曲のイメージを固めているものです。ですから、依頼人の趣味嗜好、これはもうはっきり言ってその人の好み (エモーショナルなもの、スピリチュアルなもの全て含めて) に左右されてしまいます。人それぞれ、音楽に関してはそういう嗜好性を、誰でも価値観として持っていたりします。そこが音楽の面白いところです。作り手側はそれにターゲットを絞り、発注側のイメージに合わせていくものですが、それはそれで大変な技術が要ります。 ―「これでOKだろう」と楽曲を提示したところで、「いや違う」と返されたりすることもありますね。 上手くニーズに応えているはずと思っていても、これが違うあれが違う、とスポンサーに言われたりします。そういうことの繰り返しと言うか、そんなやり取りを連綿と行いながら妥協点を見つけていく。その経過の中で、作り手としては、こんなものが作りたかったわけじゃないのにな・・・という部分がたくさん入ってくる。発注側としても、作ってもらいたかったものとはちょっと違うんだけどな・・・と。 音楽の受注制作は一つのビジネスの形としてもちろん今でも存在しますし、例えばメセナ (※企業が主として資金を提供して、文化・芸術活動を支援することであるが、これにより権力者が資金的バックアップ<発注>を通じて音楽家を囲い込む図式ができた) のように昔からあるパターンの仕事です。そもそも、ヨーロッパの偉い作曲家は、王様からこんな曲を作れ、と命令されて作っていました。映画「アマデウス」のように、全くの素人が音楽を批評し、いいとかダメとか判定するわけです。私はそれが現実だと思います。そんな外部の要望を聞く中で、それを取り入れ、さらに飛び越え、自分の価値判断・価値尺度を全面に出して作品を作り上げた、そんな天才もいます。それは作り手側が発注側をある程度無視した、飛び越えた結果です。そのようにして出来上がった作品を発注側が最終的に納得した、そんな作品の中に素晴らしいものがあるのではないでしょうか。 ―レコードが発明される以前、バッハやモーツァルトの時代から現在まで脈々と続いているビジネスの形なのですね。 それが素晴らしい作品を生み、連綿とクラシックとして残っていく、ということはもちろんあります。しかし一般的には中々うまく機能しないと私は思います。いずれにせよ、自由自在に音楽を創るための枠組みや環境が当時の世の中には存在しませんでした。 ―その枠組みの一つの試みとして音楽ライブラリを始められた。 もちろん音楽ライブラリの制作は、放送・映像業界の大きなニーズがあり始めたわけですが、しかし、音楽ライブラリの場合、一般的な受け仕事のように逐一オーダーを受けて制作を行うわけではなく、こんな曲を作ってほしい、あんな曲を作ってほしい、と具体的なディレクションを受けて作るわけではありません。もちろん、ドラマであればこんな作風、インフォメーションであればこんな作風、バラエティであればこんな作風、といったように、全体的に求められているサウンドはある程度想定が必要です。例えばナッシュミュージックライブラリーでは、今回はこんなテーマで制作しよう、と社内スタッフを中心に相当計画建ててやっていきます。そのテーマの中で、アーティストに自由に作ってもらうという基本方針です。テーマを外れてしまえばNGが出るかもしれませんが、その点以外は自由に飛び跳ねてもらいたい。いったん作り出したらアーティスト自身が自由に思うままに作りあげる、それが音楽ライブラリ制作の一つの大きなポイントです。 ―音楽ライブラリであればアーティストの創造性を最大限に生かすことが出来そうです。 それは間違いないと思います。しかし、ライブラリと言うのですから、色んな作品を揃えていなければ話になりません。テレビ、ラジオ、企業CM、イベント等、ユーザーの音楽使用用途は様々です。業務用音楽集として、色んな人が各々の使用用途に応じてピックアップして使うことができなければ音楽ライブラリではありません。私自身としては、ナッシュミュージックライブラリーの制作を始めるに当たり、とにかく自由に、活き活きとした音楽をたくさん作っていこう、という風にかなり単純に考えました。「自分が作りたいものを作る」「依頼されたものを作る」音楽ライブラリのスタンスはそのどちらでもありません。 ―ナッシュミュージックライブラリーには一般的な映像制作の業務を想定して作られたとは思えないようなユニークな作品も多いです。 思いのたけをどんどん入れてこい、投げ入れてこい、とアーティストに対して言うことができるのが音楽ライブラリであると思います。「どうしてもこんな曲を作りたい」そんな思いで作られたユニークな作品も、音楽ライブラリという「枠組み」があれば投入していくことが可能です。私は自由自在に音楽を創るための「場」、その一つがナッシュミュージックライブラリーであると考えています。 ―実際、アーティスト各々の個性やアイデアを活かしたクリエイティブな作品が際立っています。 音楽ライブラリとは、アーティストのレンジを大きく広げてくれるものなのです。音楽家によっては、そんな色んなことをしないほうがいい、と言う人もあるでしょう。私はそうは思いません。色んなことをやれば、それはそれなりに面白いものです。自分自身を100パーセント表現するための作業とは別に、色んな作品作りに挑戦してみること。私自身はそれをとても前向きに考えたいと思いました。もちろんそういう風に考えないことには、音楽ライブラリ自体を始めることができなかったわけですが (笑)  ―自分のやりたい音楽があってそれが仕事になるのならそれでいいし、ならなければ仕事とは別にやればいい、というシンプルな考え方を持っているアーティストもいます。 私自身、会社を経営しているというより、音楽を創ることを自分の仕事と決め、それをひたすら実行しただけです。新しいスタッフには必ずこんな話をします。自分ができることで社会に貢献できることがあればそれが仕事になると。たとえ自分の得意分野とは違うジャンルの音楽の要望があった場合でも自分を切り替えて、技術力と知識を高め、実力を発揮することが大切である。いや、それがオモロイねん!と。そんな私の考え方に同調したり、理解してくれるアーティストが一人、二人と増えていき、現在に至ります。今のスタッフも、チーフプロデューサーを中心に、音楽ライブラリだからできること、その面白さについて非常によく理解してくれていると思います。自分がやりたいことは見失わずに、なおかつ自分自身の音楽的な可能性を押し広げていく。音楽を志す者、音楽で生きようとする人間にとって、それはすごくチャレンジングなことだと思いますし、彼らにとっても面白い仕事であってほしいな、と思います。 ―そのようなチャレンジの上に音楽ライブラリのレパートリーは充実してきたのですね。 創業当時の1983年、音楽がビッグビジネスだった時代―まだ今でもそうかもしれませんが―アーティストのメンタリティはヒット曲を作ることに向けられ、それが至上命題でもありました。曲を流行させることが追及しやすい目標として大きくありました。大きな会社、大きな組織力、大きな宣伝力、そういうものによって特定の曲を流行させていく。みんながそれを聴き、みんながそれを歌う。そういう営みを通して一つの曲が社会に力強く浸透していく。それが音楽の仕事でした。究極的とは言いませんが、一つの大きな目標でした。そんな時代に音楽ライブラリの発想は全然違う方向を向いていたわけです。 ―今日、音楽ライブラリは放送業界・映像業界への音楽供給パターンとなっており、多くのアーティストがその制作に関わっています。 当時は新しい発想でしたから、供給側のアーティストもドラスティックにメンタリティを変えないといけません。ナッシュミュージックライブラリーのスタッフになりたいというアーティストには、うちは音楽ライブラリの仕事だから、作品がヒットすることはありませんよ、と前もって説明します。どれだけ多くの人が使ってくれて、毎日どこかで流れたとしても、有名になって大儲けができるわけではありませんから。その点を了解できるかどうか。それがナッシュのスタッフとしてやっていけるアーティストと、そんな仕事はしたくない、と考えるアーティストの大きな分かれ目になっています。ナッシュの仕事をやろうと言う人は、乱暴な言い方ですが、もう音楽を創るのが好きでしょうがない、そんな人間かもしれません。それ以外にくっ付いてくるものはあまりないですから。 ―既存の音楽ビジネスがもたらしたインセンティブを享受できるわけではない。 今のところは、とりあえず (笑) ですから、そんなものがなくても音楽を作るのか?と逆に問われるわけです。音楽ライブラリの作り手になるということは、今でいうアノニマス、つまり黒子になることです。放送業界・映像業界でどんどん自分の作品が使用され、巷に流れても、誰が作ったとか、そんなことは話題にもなりません。そんなライブラリの音楽だけをずっと作っていくこと。それを自分の音楽の仕事として選び取るか、選び取らないか、そこが大きな分かれ道になります。もちろん両方やってしまうアーティストも中にはいます。いずれにせよ、音楽制作という業態ではありますが、既存の音楽ビジネスとは根本的に違うものがありました。 ―今年、ナッシュミュージックライブラリーは創業35周年を迎えました。 スタッフに言われて気づきましたが・・・おかげさまで今までやらせてもらっています。私は、音楽ライブラリの制作に従事するアーティスト、彼らの音楽への取り組み方自体は、一生懸命に音楽を作る、いい作品を作る、という意味では他の音楽制作と何ら変わるところはないと思います。それ以外の部分に関しては、既存の音楽ビジネスや音楽家のメンタリティとは全く違うものを作り上げてきたのだな、と最近思うようになってきました。ここにきて、私がやってきたこと、ナッシュミュージックライブラリーがやってきたことはこういうことなのか、と整理して思えるようになってきたところです。  

New

大山音工房

もう約束事はいらない。必要なのは自由に、奔放に、「美」を求める心だ。

<1> 考えてみよう。 音楽は音の作品だ。そして音楽作者が本来つくりたかったのは「音」でできた作品なんだと。画家がキャンバスに絵を描いて作品を固定化させたのと同じように、音楽作者は根源的に、自分の心の奥から沸き上がるあふれるような響きを「音」に描きたかったんだと。 しかし音楽の作者は、画家が自分の作品を自分の手で描き上げるようには最終的な「音」まで描き上げることができなかった。「音」そのものは演奏家に委ねたり、録音技師に委ねたりせざるを得なかった。しかもその「音」が作品として定着し固定化されるようになったのは、音楽の長い歴史の中でごく最近のことだ。本来二義的な演奏や演奏者、指揮者、歌手、録音技術、録音媒体に人々の意識が向くのは、ひとえにこの音の固定化に音楽作者が全的に関与することができなかったからに他ならない。 音楽は絵画や彫刻などに比べて、なんと約束事に縛られていることか。 それは、二義的な関与を受け入れるための法則と楽器の整備が必要だったからだ。どの楽器で、どの高さでどれくらいの長さの音かを指示しなければ、それも普遍性のある約束事でなければ、音として再生できない。譜面という指示書がなければ音楽は「音」になることができなかったのだ。故に再生にはそれ相当の幅が必然的に生じて、作者の思いもよらない演奏が生まれたり、解釈の違いが生まれたりして、結果、音楽が作者独自の「音の作品」であることから遠ざかってしまった。 一方、画家が作品を描く手順を想像してみよう。 原理的に、絵画に約束事はいらない。作者は真っ白なキャンバスを目の前にして、心の奥から沸き上がる自分だけが知っている絵画イメージをただただ追い求めて、思うがままに絵の具を混ぜ合わせて、色という形を無心に描く。画家は己が描いた作品に全的に関与する。作品の何から何まですべてが己の創造であることを宣言し、その存在を引き受ける。 画家や彫刻家、さらに詩人や小説家は「作品そのもの」を創造する。音楽作者がこれまで創作してきたのは、作品の構想やデザインにとどまって、結局「音」という作品そのものの創造ではなかった。 <2> 画家は真っ白なキャンバスを目の前にして、まずどのジャンルでいこうか…って考えるんだろうか。何色と何色を使うとこういうふうになるって定石があって、それをまず決めるんだろうか。特定の形の組み合わせが一定の絵画イメージを生み出すことを知っていて、その取捨選択が大切だと思っているんだろうか。 音楽が「音」作品であるなら、その「音」は自由自在であるべきだ。何らかの約束事に規制され縛られていては、全く持ってつまらない。娯楽や芸能にはちょうどいいあんばいなのかもしれないが、それでは創造作品とは呼べないし、個の表現とは言えない。何より面白くない。   <3> もう一度考えてみよう。画家や彫刻家、さらに詩人や小説家は「作品そのもの」を創造する<手順>を持っている。音楽作者は、音楽の長い歴史を超えてやっとこさ<その手順>を手に入れつつある。画家がキャンバスに作品を創造するのと同じように、音楽作者はまるで絵の具のように音を選び加工し混ぜ合わせ、己のイメージに忠実な「音」に仕上げる手順を手にいれつつある。 もう約束事はいらない。必要なのは自由に、奔放に、「美」を求める心だ。 森堂自(梨木良成) 大山音工房 WEBSITEhttps://www.nash.jp/daisen/

Feature

工房ワーク

新社長就任~ナッシュミュージックライブラリーの新しい「音楽ライブラリ」の取り組み。

横山美加 (代表取締役)/近藤学 (チーフプロデューサー) 2018年7月 ナッシュスタジオにて 【1】権利面セーフティの楽曲制作 ―ナッシュミュージックライブラリーは業務用音楽素材を提供するサイトとしてクリエイターにはよく知られた存在です。 横山:主に音源の使用許諾を行っているので、音楽制作スタジオというより、業務用の音楽ライブラリを取り扱う「供給業者」あるいは「出版社」のイメージが強いのかもしれません。ナッシュスタジオは第一に音楽制作会社です。ナッシュミュージックライブラリーの楽曲は全て弊社のオリジナルであり、一貫してここ大阪市北区の自社スタジオで制作しています。 ―音楽制作の部分はあまりクロースアップされていなかった。 横山:そうかもしれません。最近は多くのライブラリーがインターネットでサービスを展開していますが、全ての楽曲をオリジナル制作で展開している音楽ライブラリーは海外も含めてほとんどありません。 ―どうして自社制作にこだわっているのですか? 近藤:作曲家・演奏家とダイレクトにコラボレーションを行うことにより、各々のアーティストが持つ個性・アイデア、現場で起こる発想をダイナミックに活かした作品づくりを行うことができることは確かです。また、作曲家の立会いの元、ここナッシュスタジオで作品のチェック・最終ミックスまで、われわれ自社スタッフが行うことで、一貫した制作観念の元、全体的なクオリティの維持・向上に努めるようにしています。 ナッシュスタジオでは、アーティスト同士の緊密な連携、コミュニケーション、チームワークを通して音楽制作のプロセスを楽しむことをモットーとしています。一人で作り、二人で作り、ボーカル作品であれば作詞家・作曲家・シンガーの三人で作り・・・それからバンド演奏になるとプレイヤーが五人、六人になり、ストリングスの録音になると、十人、二十人が参加する。オーケストラになると四十人、フィルハーモニックであれば六十人。そこに関わるエンジニアや編集の人たちを入れると、ナッシュスタジオのプロジェクトに関わっている人の数をもっと増えていく。よくよく考えると、日々、ナッシュスタジオでは幅広いコラボレーションが行われています。 横山:権利をクリアにする面でも自社制作のアドバンテージはあります。様々な作家さん、演奏家さん等と共に作品づくりを行うので、もちろん多くの権利が発生するのですが、BGM使用許諾に必要な権利に関しては、全てナッシュスタジオが法人として権利の譲渡契約を行います。そうして楽曲の権利を自社管理することによりクリアにし、全世界で、あらゆるメディアに、何回でも使用して頂ける「完全ロイヤルティフリー」のライセンス許諾を実現しています。 ―コンプライアンスが重視される昨今、権利面で不安を抱えているユーザーには安心です。 近藤:制作面でも、著作権をめぐる昨今の複雑な状況にも十分配慮する必要があります。最近はクラブサウンドやDJ向けだけでなく、音楽制作そのものに使用できるループ素材や、すでに完成した音源を組み合わせることで楽曲を作る手法が確立されました。そのような既存の素材を組み合わせる手法は確かに面白く、スタイルとしても面白い作品ができるかもしれませんが、権利面がグレーな音源、音素材が紛れ込んでしまう可能性があります。ですから、ナッシュスタジオでは素材レベルで一から制作することを心がけています。そういう意味では、ナッシュミュージックライブラリーは「完全オリジナル」であると言えます。 横山:全ての作曲家にわざわざスタジオまで来てミックスに立ち会ってもらうのは、その点のチェックの必要性も兼ねています。少しでも疑問に思ったら「この音源はどうしたの?」と作曲家自身に直接その場で訊ねて、確認を行います。「いや、自分で作りました」と (笑) スタッフとしては、そういうことに気を配りながら作業を行っていきます。 ―普段からそこまで徹底的に管理している。 近藤:楽曲であれ、それに使用される素材であれ、少しでも権利面に不安があるものは取り扱わない、というのがナッシュスタジオの方針です。例えば、一見パブリックドメインにあると思われるクラシックや民謡等には、著作権保護期間の延長があったり、編曲家の権利が一部残っている場合があり、著作権トラブルの元となる可能性があるので基本的には取り扱っていません。その代わり、ナッシュスタジオでは、クラシック”風”・民謡”風”等、完全なオリジナル作品を自社で制作し、お応えするように努力しています。   自社スタジオで生楽器の録音作業を行う近藤学 【2】「お題」から生まれるバラエティ・バリエーション ―音楽ライブラリの理想はあらゆる音楽を網羅すること、と言われます。 近藤:ですから、バリエーションを広げることを念頭にして楽曲を作っていきます。個人的には、企画からミックスに至るまで、前の曲ではこんなことをしたから、次の曲では違うことをしてみよう。そんな考え方を心がけています。全体の方針としても、よりバラエティやバリエーションを増やすために「次はどんな作品を創るべきか?」ということを綿密なスタッフ会議を通して決めていきます。プロジェクトを特定の制作テーマに落とし込んでいくわけです。 ―制作テーマとは、例えば、クリスマス・お正月・夏休み等のシーンや、ジャズ・クラシック・ロック等の音楽ジャンルなんかもそうですね。 横山:そのような制作テーマは、ナッシュスタジオでは「お題」と呼ばれています。ユーザーの皆様からの声をできるだけ反映させた作品づくりも大事にしているので、こんな曲が欲しい、あんな曲が欲しい、というユーザーさんのリクエストからお題を設定することもあります。音楽ライブラリですから、とにかく万遍なく作っていきたい。そこでお題が役に立ってくれます。 お題の設定の仕方は限りなくあります。昔流行っていてかっこよかったあんな曲を作りたいな、と作り始めることもありますし、こんな曲があったらいいな~とか、ありそうなのに聴いたことがないな~とか、そんな発想からお題を設定することもあります。何が何だかわからないけれど面白い、そんな新しいサウンドが思いもよらない「お題」から生み出されることもあります。 近藤:例えば、過去・現在・未来の音楽があると、いう風に考えます。過去の音楽と言うのは、年月をかけて広く社会に浸透した、多くの人々が聴き馴染みのある、イメージが共有されている類の音楽です。現在の音楽というのは、世の中には出ているけれど、まだ若い、いわば最先端のサウンドです。そんな過去・現在の音楽は全て「お題」を考える材料になり得ます。 そして未来の音楽。これは作り手側もさっぱりわからない、リスナーもわからない、現在に生きる我々には想定も難しい、そんな未知のサウンドかもしれません。過去・現在のサウンドはもちろん、ナッシュミュージックライブラリーの自由自在に音楽を作る枠組みがあれば、そんな未来のサウンドを担うこともあるのではないかと考えています。 ―一般的に「使い易い」オーソドックスなジャンルだけではなく、音楽ライブラリであればもっと幅広い作品を揃えていくことも可能ですね。 近藤:ユーザーの皆様からも、ユニークでアーティスティックな楽曲の要望が届いており、ナッシュスタジオでは既存の業務用音楽ライブラリの概念に捉われないプロジェクトもスタートしています。業務用音源としての「汎用性」を少しわきに置いて、楽曲の「個性」「面白さ」を追及する試みです。ただただ音を楽しんだり、未知の響きを追及したり、自己の世界観を突き詰めたサウンドを作ってみたり・・・いずれにせよ、音楽ライブラリの総合的に充実させ、バリエーションを拡張するためにはそんな新しい実験的な試みも必要とされます。 ―なるほど、そのような広大な音楽のレンジ・可能性から「お題 = 制作テーマ」を絞り込んでいくわけですね。 横山:色々と試行錯誤があり、時間をかけて構築されてきたところがありますが・・・実は、私が入社した当時 (年入社) はお題がありませんでした。当時は楽曲数も今ほど多くはなく (現在は25,000トラック以上所有) 各々の作家が持ち寄った曲がそのままバリエーションになっていたからです。バラエティが増えるにつれて、ライブラリの総合的な充実を念頭に置きながら、同じような作品ばかりにならないように、何を作るべきかを決めていくことになりました。当初は、そんなやり方で曲が作って行けるのだろうか、と個人的には不安でした。 ―それまでは各々が自由に作ったものを持ち寄っていただけだったのが、全く新しい試みとして「お題」制度が導入された。 横山:お題は「お正月」でお願いします、とみんなに発注して本当に満足のいく作品が出来上がってくるのだろうか、一貫性のあるアルバムとしてまとまってくれるのだろうか、そんな不安はありましたが、やっていくうちに、作品としての面白さがどんどん際立ってくるのを感じました。作る側からも、「お題」に向かって音を作る、その楽しさについて想定外の反響がありました。また、お題に合わせてミックスの仕方も変わります。どんとメロディを強調するか、抑えるか。ベースを押し出すか、引っ込めるか、それだけで曲というものは大きく表情を変えるんですね。例えば、インフォメーション系のお題で、ナレーションのバックに流れるタイプの曲であれば、メロディは邪魔になるので控え目に。一方、ドラマチック系のお題であれば、メロディが曲を決める、と言っても過言ではないので、メロディを中心に据えて構成していく等、お題が方向性を明確にしてくれます。 今から思うと、お題によって、ナッシュミュージックライブラリーならではのスタイルが確立され、レーベルとしての統一感が生まれていったのかもしれません。作曲家としては、与えられたお題の範疇でいかに自分らしい、面白い作品をつくれるか、が問われます。あまりがちがちにテーマで縛ってしまうと、作曲家の自由度が奪われ、作品から面白さが失われてしまいます。どこまでを作曲家の感性に委ね、バリエーションとして受け入れ、取り入れていくのか。そしてどこからがNGなのか(笑) それと同時に、業務に使用を想定して「使い易さ」「汎用性」も両立させなければいけません。その辺りを判断していくのは、非常にダイナミックで楽しい作業ですが、一番悩まされるところでもあります。そんな作業を通して、お題の設定の仕方や、それに対して作曲家が提出する作品の精度がどんどん向上していることは確かです。   自社スタジオでサウンドのチェックを行う横山美加 【3】音楽ライブラリが拡げるアーティストのレンジ ―お題の幅、その線引きをどこで行うか。作曲家としては、与えられたお題の中でいかに自分らしさを出せるか・・・そこが腕の見せ所ですね。 近藤:ナッシュスタジオとしては、参加するアーティストには持てる知識、経験、技術をフルに活かしてもらいたいと考えています。まず、われわれスタッフがストロングポイントを把握し、得意な部分を発揮してもらえるようにすることが大事です。実際、今度新しく入ったスタッフの長所を生かしてこんな作品をつくろう、そんな風にお題やプロジェクトを設定することもあります。しかしながら、音楽ライブラリの制作は、その都度違うバラエティが必要とされるので、場合によっては、作曲家が苦手な、あるいは未知のジャンルに挑戦することもあります。そんな時、音楽的な技術・発想はもちろんですが、前向きにチャレンジするメンタリティがナッシュスタジオのアーティストには求められます。 ―専門性・得意ジャンルだけではなく、新しいスキルも進んで獲得していかなければいけない。 近藤:その通りです。みなさん得意分野が違うので、互いから学び取ることもあります。制作を取り仕切るスタッフとしても、アーティストさんには建設的なアドバイス・作品に対するフィードバックを行うよう心がけています。ナッシュスタジオでは、アーティスト同士、お互いに切磋琢磨し、影響を与え合っている部分も大きいです。あの人はこんな曲を作ったのか・・・じゃあ私はこんな曲を作ろう!この人はこんな曲を作れるのか、今度是非一緒にやってみよう!等々、刺激を与え合っていますね。そういう意味では、ナッシュスタジオはにぎやかで楽しい現場になっているのかな、と思いますし、そんな現場だからこそ生まれる活き活きとした作品がありますね。 横山:そんな他者とのコラボレーションを通して、音楽家としてのやりがいや、表現の幅の広がりを感じてもらえるのが音楽ライブラリ制作の醍醐味の一つです。ナッシュスタジオはアーティスト同士のつながりも深く、みんなで定期的に飲みに行ったりもします。アーティスト談義みたいなものはよくしているので、すごくみんな仲がいいです。そんな席で、こんな曲を書くからギターを弾いてください!今度歌ってください!とか、一緒に組んでやってもらう話が出たり、具体的にプロジェクトが動き出すことも多々あります。 ―アーティストとしても成長できる環境があるということですね。 近藤:経験上、必ず成長しますね。最近は20歳の子なんかも新しく入ってきたりしますが、もうあらゆる音楽を作らないといけないので、相乗効果のように、どんどん発想が豊かになっていきます。中には一つのジャンルが得意で、EDM・クラブミュージックに特化した作曲家もいれば、民族系専門、みたいな作曲家もいて、そういう人材が必要とされることも確かにありますが、そんな全部を含めて何でもやってみたい、やってみてやろう、という作曲家にとっては一層刺激的な現場であると思います。 横山:面接に来るアーティストには「こんなのに興味はありますか?」と、個人の音楽活動の中では想定することがないようなスタイルなりジャンルを一度投げかけてみます。例えば、インド音楽とか (笑) それを「面白いですね」と言う人と、「いやーっ」て言う人とがいるんですよ。ハロウィンとか、ジャパニーズホラーとか、IDMとか・・・ ―幅広いですね、次は何が来るか予測できないくらいに・・・ 横山:ナッシュスタジオは個人の音楽活動の範囲では到底思いもよらないようなお題をポンポン投げかけます。ナッシュスタジオで継続的に仕事をしてもらうためには、その辺りを面白がってやっていただける方、という前提がある。音楽家としてのレンジという意味では、色々とやっているうちに、自ずとスキルは上がっていきますし、それは見ていてすごく楽しいものです。企画するスタッフ側としては「できるかな~」と探りながら依頼するわけですが (笑)「この人はこんなこともできるんだ!」「あの人はこんな曲も創れるんだ!」という驚き・発見の喜びがあり、それが一つの大きな醍醐味でもあります。作曲家側も「こんな曲も作れた!」という風に楽しく、面白がりながら、のびのびと自分を表現してもらいたいですね。 近藤:最近の若い作曲家のスタンスは、自分自身のアーティスト活動とナッシュの仕事を必ずしも分けて考えていません。自身の音楽活動の一環として、その中にナッシュミュージックライブラリー制作を自然に取り入れ、SNSなんかでもどんどん個人的に発信しています。必ずしも「黒子」とか「裏方」という認識ではなくて、こんな音楽ライブラリの仕事もミュージシャンとしてやってますよ、アピールさえするようになっていますね。 ―そんな表現を通して自分のレンジを拡張してきたアーティストたちがナッシュミュージックライブラリーを作ってきたのですね。 横山:そうです。大ベテランから、非常に若い人まで、アーティストの年齢層が幅広いのも特徴です。世代を超えて一つの「ナッシュ」というチームになっているイメージです。様々な作風やジャンルに対応する、あらゆる種類のアーティストの方々とお仕事をしてきましたが、基本的に、学ぶことをいとわない、研究熱心なスピリットを持っている方が多いです。企画するスタッフ側としては、お題を含め、作曲家のみなさんに対して色々とオーダーをすることもありますが、その中でも自分らしさを出してもらいたい、自分自身の音を出してもらいたいと思います。それはやっぱり、その人のいいところ、光るところがナッシュミュージックライブラリー特有のバリエーションになっていくからです。 ―DTMが定着した一方で、まだまだ音楽制作は共同作業という面がありますね。 横山:完全に一人きりで行う表現独特の面白さ・世界観はありますが、みんなが各々の楽器・才能を持ち寄って一つの作品をつくりあげる、そんな音楽制作の醍醐味が失われたわけではありません。今後はそういうコラボレーションの面白さをもっともっと追求していきたいと考えています。やっぱりみんなでやるのは楽しいですしね。ストリングス、フルオーケストラ、ジャズバンド・・・素晴らしい演奏を聴くと感動しますし、私自身、作曲家としても刺激される貴重な体験です。ユーザーの皆様からも、生楽器を使用した人間味のある作品への要望は多いので、そういう昔ながらの、ダイナミックなプロジェクトをどんどん行っていくことで応えたいと思います。 今も、音楽制作はたくさんのコミュニケ―ションを必要とします。音楽と言うものは一人黙々と作るもの、そんなイメージを持っている方もいらっしゃると思うんですけどーそういう部分はもちろんありますがー多くの面で人と人との直のコミュニケーション・チームワークによって実現されていくものです。作曲家であれば、こんな音が欲しい、あんな音が欲しい、それをプレイヤーにどのようにして伝えるか。自分の思いを第三者に伝える力は、そういう意味では、良い音楽を作るための武器なので、確かに求められる部分です。 近藤:アーティストの仕事の仕方は、人それぞれ違うと思いますが、曲をつくるという面では、音楽ライブラリの作曲家は、思いついたらそこでさっと書いてしまう。ゾーンに入っているうちに仕上げてしまうことが大事かもしれません。スピード感が求められるからといって、手抜きはもちろん許されませんし、また燃え尽きてしまってもいけませんから、生産的、効率的に作業を行っていくことが必要です。また、いい作品をつくるにはこだわりも必要ですが、時には指摘されたことを受け入れる柔軟性が必要とされます。そういう意味では、音楽ライブラリの総合的な充実というゴールを共有してくれる、プロフェッショナルなアーティストにナッシュスタジオは恵まれています。   作家・演奏家とのコラボレーションを通じて幅広い音楽作品を生み出す 【4】新社長就任~ナッシュスタジオの新しい取り組み ―2018年8月、ナッシュミュージックライブラリーの創業者である梨木良成氏の後任として、元々はナッシュスタジオの音楽制作全体を取り仕切る制作部長であった横山さんが代表取締役に就任しました。 横山:今後は、ナッシュスタジオが第一に「音楽制作会社」であることをユーザーの皆様にもっと認識して頂けるような、クリエイティブな集団だから可能な取り組みを行っていきたいと考えています。現在の音楽・著作権を取り巻く複雑な環境において、「著作権フリー」「音楽ライブラリ」という言葉が一般社会にも浸透し始めていますが、どうしてもそのような著作権フリーの音楽ライブラリの「供給業者」であるとナッシュスタジオは捉えられがちです。ナッシュスタジオは音楽制作会社ですし、オリジナル音源の制作・ライツ管理・供給、その全てを自社で行うわたしたちだからできることがまだまだあるのではないか。 ―外部のアーティストの作品投稿は受け付けていませんし、海外からの輸入音源の取扱も行っていません。 近藤:自社制作にこだわらず、無数のアーティストが作品を持ち寄る音楽ライブラリ・供給業者だから生み出せる音楽のバラエティがありますし、もちろん海外の音源には海外の音源にしかない個性・魅力があります。ナッシュスタジオでは自社制作にこだわることにより、そんな幅広い「音楽ライブラリ」の世界に一つの個性的なバリエーションを作っていると思います。 原則的にオールジャパニーズスタッフで制作を行ってきたので、当然と言えば当然かもしれませんが、ナッシュミュージックライブラリーは、総体として「日本的な音楽コンテンツ」という認識をされているようです。特に、最近は日本のアニメ・ゲーム・ドラマ・バラエティ等の人気が海外でも高まり、その影響で日本のコンテンツにインスパイアされた作品を作るクリエイターが海外でも増えています。彼らは、自分の作品のサウンドトラックに「日本的なサウンド」を求めてナッシュミュージックライブラリーを利用するようになっていますね。 ―逆に、日本人のクリエイターも洋楽っぽいものを求めたりするわけですが、コンテンツによっては洋楽・海外ライブラリの音源はちょっと合わないな、というケースは多々あります。 横山:ドラマの音楽であったり、バラエティの効果音であったり、インフォメーション系であったり。必ずしも伝統的な和風音楽に限らず、ポップスでもイージーリスニングでも、日本特有のカルチャー/サウンドがあります。創業以来35年以上、日本の放送・映像コンテンツ向けにサウンドを提供してきたナッシュミュージックライブラリーにはそのようなジャパニーズサウンドが揃っており、その辺りは海外のライブラリにはない個性だと思いますので、今後も大事にしていきたいと考えています。 ―ナッシュミュージックライブラリーの新たな展開について、何かあれば具体的にお聞かせください。 近藤:これまでは、主に放送・映像業界のプロフェッショナル向けのあくまで「使用される」ための音楽ライブラリ、いわばB to Bのサービスを展開してきましたが、近年、ナッシュミュージックライブラリーの楽曲を使用するのではなく、純粋に音楽コンテンツとして「個人で聴きたい、楽しみたい」という一般リスナーの皆様の声が高まっています。これまでのレコード、CD、ダウンロードという供給形態では、業務用のライセンス価格と折り合いがつかず、一般リスナーの皆様に手が届く価格の設定・供給が不可能でしたが、近年、Apple Music、Spotify、AWA等のストリーミングサービスの利用が若い世代を中心に一般化しており、そのようなストリーミング再生に限定したプラットフォームを通して、ナッシュミュージックライブラリーを一般の皆様向けに楽しんでいただくことも可能ではないか、と考えているところです。 横山:また、これまでナッシュスタジオで楽曲の制作に携わってきたアーティスト各々が、ナッシュミュージックライブラリーの25,000トラック以上のリソースを活かして、一般のリスナーの方にもお楽しみ頂ける「音楽番組」を作り始めています。一人で楽しんだり、BGMとしてお店で流したり、各種イベントや、最近流行しているライブ動画配信で流したり。様々な楽しみ方のできるストリーミング再生に限定した音楽番組の展開を始めたいと思います。 その他、新しくやりたいこと・・・そうですね。でも、普段からやりたいことをやっていますからね。それをもっとやる、って感じかもしれません (笑) 近藤:同感です。    

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