Nashiki’s Note <7>

この世界は苦に満ちている、と久遠の人が言われた。
その苦界からの解脱がままならない凡人に与えられた、
恩寵なのか?

生木を荒々しく彫った仏像がある。
誰かが彫ったというより自ずから立ち現れたような、
あるいは超然とその場で響いている「音」のような、
かたち。

この世界の真理があるとすれば、それはこんなかたちで
個々のいのちに伝えようとしている、かのごとく。
最も純粋な意味での「信仰」というものがあるとすれば、
それはこんなかたちで祈りを可視化している、かのごとく。

表現は人の使命なのだ。
そこになされる合掌もまた
人の使命だ。

梨木良成 (音楽制作顧問)