アーティスティックで自由自在のサウンドメイク。

「記憶の断片」がミステリアスに漂う魅惑的なエレクトロニカ/アンビエント作品です。



Self Production Note

by 

Yasunori Ogawa

前作「quiet emotion」は、所謂「音楽」から距離を置いた音作品を作ることを目標とし、リズム、メロディー、ハーモニーを可能な限り稀薄にするため、フィールドレコーディングした音素材を非常に多く用いた作品でした。
音素材は耳障りの良い自然の音は皆無で、大阪や神戸といった都会で録音した都会的な音で、ヒーリング的な音にも背を向けたサウンドでした。

今回「FRAGMENT OF MY MEMORY」を制作するにあたり、前作よりは少し「音楽」に寄った位置にある作品を作りたいという思いがありました。
前作を制作して以降年齢を重ね、「何か先進的なものを作らなければ」といった気負いが薄れ、自分の内面からわき出るものをストレートに表現したくなったのです。

今作では幼少期の記憶を辿り、自分のルーツを再確認する旅に出ることにしました。例えば、自分の住む町と島の間の小さな海峡を結ぶ橋のたもと、海に沿って走る防波堤沿いの県道、観光船乗り場近くの土産屋が並ぶ通り、遊び場だった神社の境内にある小さな池など、現在に至るまで自分に影響を与え続けている場所に関する記憶を辿りました。

思い浮かべる風景はある日ある時のひとつの場面のようですが、実はひとつの場面ではなく、時間的にも場所的にも複数の記憶の断片がレイヤーになったものが、あたかもひとつの場面のように記憶されているように思います。
そのレイヤーを音のパートに見立てて、音を重ねていきました。

重ねた音は前作よりも楽音の割合が多くなっていますが、前作同様に「演奏」という行為からは距離を置いています。
演奏による音楽表現は勿論素晴らしく、楽しいものでもありますが、様式に囚われない詩のように音を紡ぐには、演奏しないスタイルが自分には合っていると考えています。

結果として音楽的な高揚感の希薄な、静かな作品となりました。
とても個人的な想いを音にした作品ではありますが、この作品の音をきっかけに、懐かしい記憶への旅を楽しんでいただければ良いなと思います。

小川泰典 (ミュージシャン/作曲家)