Nashiki’s Note <5>

自由は重荷なのか。

好きなようにやれ、と言われて素直に喜ぶ人がいる。
好きなようにやれ、と言われて困惑する人がいる。

もとより自由の中で己を創造していくことは生易しいことではない。
各々先達の知恵は尊いとしても、それを自らの問題、課題として再設定するなら、
一旦は白紙に戻さざるを得ない。
自由を与えられて、ただ欲望に身を任せると、それはとてつもなく苦しいことになる。
自由を与えられて、創造の場がそこに生じると、がぜん話は違ってくる。

あらかじめ人生の目的が設定されていれば、生きていくことは容易かも知れない。
あらかじめ規範や規律が厳密に設定されてやるべきことが決まっているとしたら、
さして悩む事はないかも知れない。
あらかじめ音楽とはこういうものなのだと誰かが教えてくれて、その通りやって事が済むなら、
話は早いかも知れない。

しかし、
どれほど重荷であったとしても、自由の中でしか創造はなし得ない。
どれほど重荷であったとしても、自由の中でこそこの命はドライブする。

梨木良成 (音楽制作顧問)

 

 

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