森霊 by 出口煌玲

Self Production Note ────────

世界文化遺産にもなった、奈良・春日山原始林にて、龍笛をはじめとする横笛の独奏を、自然環境音と共に録音した。

私は、野外・屋外での演奏することが人よりも多いらしい。
他の演奏者に共演をお願いするときに、「今度も屋外なんでしょうか?」と、よくたずねられる。 横笛(和笛)は、音がよく通る。また、高音が鋭い。 耳元よりも、遠鳴りのほうが、ずっと心地よい。 したがって、野外では横笛、ということになるようだ。

夜桜コンサート、観月コンサート、篝火コンサート、ガーデンコンサート、野点での演奏、フェスティバル等での野外特設ステージ、等々。 そして、これらにはリスクもつきまとう。天候である。

雨天・晴天、はっきりすればいいが、降るのか降らないのか、怪しい天気がとても困る。 竹製の笛は、多少は濡れても、どうっていうことはないが(むしろ、乾燥のほうが怖い)、たいていの楽器は、湿気・水濡れ大敵。それでも、彼らが共演依頼を受けてくれるのは、美しい庭園とか自然環境のなかで演奏できることに魅力を感じているからで(また、そういうことが好きな音楽家に声をかけるのではあるが)、楽しみと不安が交差した心境で、その日を迎えるそうである。

何故か当日は微妙な天候の日が多い......。毎回スリリングだ。

まさか、この作品のレコーディングまで、野外になるとは思わなかった。 やはり、その録音日の天候も、小雨が降ったりやんだりというものだった......。 非常に私らしいシチュエーションだ。

出口煌玲 (雅楽演奏家/音楽家)


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