我、寂寥を漂白す

by

森堂 自

久遠の人は、
この世界はただただ縁起によるあらわれであり
そこにいかなる実在もない、と言われた。

菩薩は、
その苦悩から抜け出すことのできないあわれさを
限りない慈しみで、悲しまれた。

おお、これまで幾千万の心が、
その慈悲に支えられて生きたことだろう
何億の魂が、
その慈悲に包まれて死んだことだろう。

私たちは漂白し続ける、
ただその慈悲をよりどころに
いかなる実在もないこの世界の
無限の寂寥を。

森堂 自