その美しい歌声、繊細なエモーションに交錯する、 いにしえの幻想と魔性は、

妖しくも可憐な花となって舞い踊る。

Hanaemaki 

by 

Yoko Yamamoto

レコーディング前の出雲大社へのお参りは、出発前からトラブルだった。車の車検証が盗まれるというハプニング。体調絶不調の私。予定より大幅に遅れてなんとか出発したものの、島根県は予想以上に遠く、そして出雲大社は暑かった。猛暑の中、待ちくたびれていた梨木社長と三野さんはグッタリ・・・すでに“花絵巻トラブル”は始まっていた。。。
6日間のレコーディング。どう歌うべきか戸惑う私に「歌いたいように歌え」という梨木社長。何度歌い直しても納得がいかず、もう歌えないと言ってしまった。毎日が話し合いだった。「神在月」「春なれば」では、もっと怒鳴れ!シャウトだ!と梨木社長。歌いたいように歌うって何?そんな私が、いつからかもっと表現したい、もっとやってやろう!そんな自分になっていた。曲のやり直し、アレンジのやり直し。。ミックスは一旦完成したが、納得がいかないと言う私の意見を梨木社長は受け入れてくれた。「分かった、好きなようにやれ」
ミックス作業は今回の総合ディレクターでもある近藤学さん。抜群のセンスを持つ学さんならやってくれる・・・莫大な時間をかけてミックス作業に取り組んでくれた。最終段階まで意見をぶつけ合い、完成出来ないかもしれない。「発売中止か・・・」そこまでいってしまった。どうしようもない時、ベテランの横山美加さんの一言が有難かった。空気が一変し解決していった。
納得のいく音が聴けた時は嬉しかった。言葉にすると軽くなりそうで上手く言葉に出来なかった。結果は、力を出し尽くしたものが出来たと思う。ここまでやりたい気持ちを尊重してくれる、意見を言い合える場所があることを嬉しく思う。数多くのトラブルは、このアルバムのコンセプト“天女”が悪戯をしたのかもしれない。。。
私にとって初のアルバム「花絵巻」。
時に激しく苦しい、時に切なく恋しい世界。人間本来の感情がこのアルバムに詰まっています。幻想的な和の世界“ジャパニーズ・ファンタジー”をどうぞお楽しみください。

山本陽子

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約半年の制作期間、コンセプトである「天女」から始まり、収録曲「神在月」の巡礼に制作に関わるスタッフ総出で出雲大社へ。楽曲の制作、レコーディング、ミキシングに至るまで、異例な程の時間をかけた。特にミキシングには気を使った。主に生バンドをしたがえステージで活躍する「山本陽子」は生ならではの豊かな表現力が魅力であるが、その魅力を如何にしてCDというパッケージに収めるか、ということだ。コンサートを聴いているかのような臨場感、音の強弱をそのまま出すということが一番自然かもしれないが、それならリスナーにはホールに足を運んでもらったほうがいい。CDの場合はもっと身近であってほしかった。リビングで、車の中で、歩きながら、、、いつもの生活スタイルの中に溶け込む音作りを心がけた。

近藤学 (制作部長)

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日本古来の幻想的で不思議な空間意識とでも言うんでしょうか、月を愛(め)で、カミを畏れ、奇想をめぐらし、自然のいとなみに霊を感じ、なお現実(うつつ) に惑い、恋に狂い、季節にうつろうことで私たち日本人のアイデンティティは確立して来たのかも知れません。「ただのきれいなヴォイスじゃないのよ!」山本陽子のこのアルバムへのチャレ ンジには壮絶なものがありました。まるで物の怪がとりついたように連続爆発するエモーションに制作現場はしばしば火事場のような様相を呈して、絶望と情熱と涙が交錯する中から、やがてたしかな「形」が徐々に彫りだされてきたような気がします。 ひょっとしたら山本陽子の挑戦は実はこの「日本のこころの生成」過程であったやも知れません。可愛かったり、コワかったり、哀しみにあふれ、毅然と美し く、天女・山本陽子は妖しく微笑んでこころ奪われます。

梨木良成 (音楽制作顧問)